今年の大河ドラマは久しぶりの平安中世が題材でどんな感じになるのか楽しみです。
大河ドラマは途中でリタイヤしてしまう事が多くて、なかなか最終話まで視聴が続きません。好きな登場人物が出て来なくなると（出番がない、物語の中で亡くなる等）、一気に観る気が失せてしまいます。「篤姫」は小松帯刀が亡くなった後リタイヤし、「花燃ゆ」は主人公、文の聾唖の弟が死んだのがショックで観るのをやめました。寅次郎（松陰）が亡くなった事は耐えられたのに、敏三郎の死は受け入れられず、本当に無理でした。
人が亡くなるのが無理というのは、大河ドラマを観るのには余り適していない気がします。
もうひとつ、ドラマの出だしでつまずく場合も多いです。キャスティング問題。わたしは長年にわたり「キャスディレ脳（キャスティングディレクター思考）」を培ってしまった事から、どの役者がどんな役柄をやってきたかをしっかり覚えてしまう性分で、これがなかなか厄介なのです。
例えば、「八重の桜」の山本八重の綾瀬はるかが「いだてん」で熊本の池辺スヤ役になっていると。
——ちょっと、なんで八重さん。なんで熊本弁喋って、薩摩に落ちているの？
と怒りを含んだ気持ちで観てしまいます。
同じ作品の西郷頼母役の西田敏行が、「せごどん」で薩摩弁のナレーションをやっているのも違和感でした。でも昔、西田敏行は主役で西郷隆盛を見事に演じていたからいいのか。でもこの人、「まんずまんず」って話し方のほうがネイティブでイメージは陸奥の人。
山川大蔵の玉山鉄二が桂小五郎になっているのも極めて遺憾でした。「長州に落ちるのか、玉山。なんでだ！！」と、美形で格好いい外見が追い打ちをかけるように残念でした。
逆バージョンで、「新選組！」の久坂玄瑞役だった池内博之が、八重の桜では梶原平馬をやっていたのも。元久坂が年齢重ねたからって会津藩家老は無理でしょ、と憤っていました、当時。
キャスティングでの薩長問題は結構深刻なのです。なんでNHKのキャスティングディレクターはその辺りを配慮しないのだろう。イメージが狂うのはキャスティングとして致命的なのに。
そして、今回の「鎌倉殿」も北条政子の女優さんが、「義経」で巴御前をやっていた記憶がまだ鮮明に残っていて、わたしの中で違和感が沸いて困っています。
でもこれって、役者と役柄をただ混同してしまっているだけで、たまたま演じたキャラクターだっただけの話。役者も仕事として芝居をしていて、そりゃあ別の作品で敵味方両方の役柄にキャスティングされることもあるでしょう。大河ドラマのような歴史物は特に。
それはよくわかっているのです。でもイメージの狂いというのは、ドラマを見ていて本当に辛いものなのです。
これを私は昔から家族に訴えていました。娘は「そんなに嫌なら大河を見なければいい」といいます。そして、「母さんのような感覚をしていると、何も楽しめないよ。フィクションなんだから」と呆れています。
そんなわたしに娘は「FGOを一度プレイしたほうがいいよ。キャラがどうとかうるさいよ。伝説や歴史を越えたフィクションの面白さを味わったほうがいい」とソシャゲのFate/ Grand Orderをプレイするように勧めてきました。これが約一年前のこと。
ちょうど新選組の斎藤一が実装されるタイミングでFGOをプレイし始めて、見事にはまって現在も継続して楽しんでいます。そして、確かにキャラクターと物語の世界が多種多様に存在することが前提となっている設定に居心地の良さを感じるようになりました。
それは異なる「世界線」の存在です。
キャラクター(サーヴァント)は異なる世界線での実存です。そこで起きた出来事は、そのキャラクターが元の世界に戻ると、全く関知しないかうっすらと霊基に刻まれているというふわっとした設定です。ゲームストーリーが各章全く別次元の世界で起きた事として、毎回異なる世界線が舞台となります。奇想天外で本編もイベントエピソードも毎回終えた後に奇妙な独特な感動を与えてくれます。
そして、この別の世界線の話として捉えるという考えかたや感覚のお陰で、大河ドラマのキャスティングの違和感も受け入れられるようになってきました。つまずきの解消です。八重の桜、いだてん、せごどんはそれぞれが全く別の世界線のエピソード、きっと綾瀬はるかちゃん（八重さん）は「いだてん」では山本八重だったことを関知しないで生きて（演じて）いるんだと思うと、違和感なく受け入れられるようになりました。キャスディレ脳の進化です。
最近、これを私は現実世界の捉え方でも使うようになってきました。巷のニュースをみて、いたたまれない気持ちになる時に、「これは別の世界線で起きているんだ」と思うようにしています。そうすると、自分のATフィールドが守られるような気がするのです。パンデミックも他国で起きている軍事侵略の脅威も、痛ましい事件や事故、くだらない芸能ニュースなど、眼に入り耳にしても自分のいる現実とは切り離して冷静に受けとるようになりました。怒りや悲しみ、不満や不快感を覚えても感情的にならなくて済む分、ストレスは軽減します。
いまのところ、大河ドラマも巷のニュースも「つまずき」はふわっと「別の世界線のこと」と受け流しながら楽しんで観ています。
