‘Prayer Is Not Enough.’ The Dalai Lama on Why We Need to Fight Coronavirus With Compassion
2020年4月14日
友人たちは時折わたしに「魔法の力」を使って世の中の問題を救って欲しいと頼んできます。私はいつもダライ・ラマには魔法の力はないと教えています。もし私にそのような力があれば、足が痛いとか喉が枯れて痛いとも感じないでしょう。私たちは皆同じ人間です。そして、同じように恐れを感じ、同じように希望を持ち、そして同じように疑念を持ちます。
仏教的観点で捉えると、科学者たちは皆、苦痛、高齢や死についての苦しみや真実に精通しています。一方で、人間として、私たちは怒りやパニック、そして欲望を抑える心を持つ能力を持ち合わせています。ここ数年の間、私は「感情の武器を取り払うこと」に重点を置いています。物事を恐れや怒りと混同することなく、現実的に明確に見るのです。もし問題に解決法があるのなら、私たちはそれに働きかける必要があります。もし、解決策がなければ、そのことを考える必要はありません。時間の無駄でしょう。
私たち仏教徒は、世界全体が共存していると信じています。だから私は世界全ての責任についてよく話題にします。この恐ろしいコロナウィルスの蔓延は、一人の人間が他の人間一人一人に即座に影響を与えることを示しています。一方、ウィルスの蔓延は、医療機関で働いている、いないにかかわらず、又、社会的距離を置いて生活しているといった、他者への思いやりや建設的な行動が多くの人々を助ける可能性があることを教えてくれています。
武漢でのコロナウィルス発生のニュースが報道されて以来、私は中国やそれ以外の地域にいる兄弟姉妹たちの為に祈り続けています。今、私たちはこのウィルスに対しての免疫を持っていません。私たちは皆愛する人達や未来の事、世界経済、自分自身の家の事を心配しています。しかし、祈りだけでは十分ではないのです。
この危機は私たちが持てる責任を全うすることを示しています。経験科学から始め、この状況を好転させ、このような脅威から私たちの未来を守るよう、勇敢なドクターやナースを結束させる必要があります。
重大な危機の今、長期間の挑戦について考えること、地球全体の可能性について想いをはせることはとても大切なことです。宇宙から私たちの世界を撮影した画像を見ても、この青い地球には何も境界線がないことは明らかです。ですので、私たちは地球を大切にし、気候変動や破壊的な力から守らなければなりません。私たちが先例のない規模の挑戦に立ち向かうには、人々が集結し、地球規模で協調しあうことが必要だと、パンデミックは私たちに警告しています。
私たちは誰もが苦痛から解放されることがないことを知っておく必要もあるでしょう。家や資源、守ってくれる家族がいない人々に手を差し伸べましょう。この危機は、たとえ私たちが離れて暮らしていても、他者と分離をしていないことを示しています。我々は思いやりと助け合いの行動をとる責任があります。
仏教徒として、私は非永続性の原理を信じています。私が過去に見た戦争や脅威のように、やがてウィルスは終息を迎えるでしょう。そして、私たちが過去に成し遂げたように、地球規模の共同体を再建する機会を得るのです。私は心から全ての人々が安全に静かな心で居られることを願っています。疑念が生れる今この時、多くの人々が建設的な努力をしていることに希望と自信を持ち続けることがとても大切です。
Published by Time Magazine – April 14, 2020
(オリジナルテキスト: https://time.com/5820613/dalai-lama-coronavirus-compassion/)